読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ソルティライムシャーベット

小説とかライトノベルとか漫画とか邦楽とかの感想とか

青山七恵 かけら あなたの事を想っている私をあなたはどう想っているのだろう。

☆☆☆☆ 新潮文庫

かけら (新潮文庫)

かけら (新潮文庫)

良い短編集でした。各話、とある人物の事を想っている主人公がどうその人を見ているのか?どう想っているのか?それを通して見られてる側は自分の事をどう見てるのか?を綴った物語だと感じました。青山七恵さんの気取らない文章でスンナリと物語に入り込ませてそして、時に主人公がどう見られてるのかでハッとさせられたりした。こうどう想っているかで綴られてるけれどもそれがどう見られているのかや見ていた対象の人物の別の一面を見せられて世界が変わる。三編読んでて共通して感じた事です。

まず表題作でもあるかけら。
大学生の娘と寡黙な父の親子で当初他の家族と一緒に行く予定が、少し気まずい感じの父と娘でサクランボ狩りツアーへ行く事に。父親の事をあくまで父親としてでしか見る事が出来てなかった娘が旅中に父親が言うかけらの事については、ハッとさせられたし。そして旅から帰り父親としてでしか見ていなかった娘が改めて父親とはと思うシーンでの心境の変化が素直にスッと面白い。

次に欅の部屋
結婚を間近に控えた会社員の男。そして結婚のため引越しをする事に。そして住んでたアパートの別室には主人公の元カノがまだ住んでる。その区切りに元カノの事を想うシーンは明らかに忘れるために最後の整理を感じさせる。そして思いだす事で今の結婚相手や元カノへの想いも固まりだす。忘れるために最後に思いだす。それをする事で主人公が元カノへの想いや別の人と結婚する現状への想いを丁寧に映し出すのはさざ波じゃない。池に石を落とす波紋のような印象。

ラストは山猫。
沖縄に住む親戚の女の子が大学見学のために新婚夫婦の家に数日泊まらせてもらう。新婚という環境に入る異物。その女の子の事を妻はどう見ているのか、そして夫は別の見方をしてるんだ。と妻と夫の視点を交互に少女を見ていく。東京タワーのエピソードは逆に少女がどう妻を見ていたのかどう夫を見ていたのかがくっきりして、あまり意思表示をしない少女の内面が綺麗に解けていった。その解け方が心地よい。

面白いですよ、これ。